採用アトラクトとは?フェーズ別に見る実践方法まとめ

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企業が選ばれる側に回った今、自社の魅力を戦略的に伝えることが欠かせません。その鍵となるのが「アトラクト」です。採用活動の各フェーズで自社の魅力を伝え、候補者の入社意向を高めるにはどうすれば良いのでしょうか?
本記事では、アトラクトの基本から採用の各フェーズで実践できる具体的なアトラクト方法、成功のポイントまでをわかりやすく解説します!
採用における「アトラクト」とは何か?
採用における「アトラクト」とは、簡単に言えば、採用活動の中で候補者に自社の魅力を効果的に伝え、「この会社で働きたい」という入社意欲を高めてもらう働きかけのことです。もともと「アトラクト (attract)」は英語で「引きつける」「魅了する」という意味で、採用の文脈では自社に優秀な人材を引きつけるためのコミュニケーション全般を指します。
単に企業側が一方的に良い点をアピールするだけではなく、候補者が各フェーズで「知りたい」「確認したい」と思っている情報を察知し、それに応える形で自社の魅力を伝えていくことが重要です。そのためアトラクトは、一度きりのテクニックではなく、採用プロセス全体に組み込むべき戦略的なコミュニケーションだと言えます。
なぜ今アトラクトが採用で重視されるのか?
では、なぜ採用活動においてアトラクトがそれほど重要なのでしょうか。最大の理由は、優秀な候補者を確実に自社に迎え入れるためです。どんなに選考を順調に進めても、最後に「他社の方が魅力的だった」と内定辞退されては採用成功とは言えません。アトラクトを強化すれば、候補者の自社に対する納得や信頼を高め、内定承諾率を向上させる効果が期待できます。
また、選考中に十分な魅力づけができれば、入社後のミスマッチを防ぐことにもつながります。さらに、候補者に寄り添った情報発信は企業イメージの向上にも繋がり、たとえ不採用や辞退になった場合でも良好な関係を保てるでしょう。
このようにアトラクトは、単に一人の採用可否だけでなく、企業の採用力全体を底上げする重要な戦略なのです。
採用の各フェーズで実践できるアトラクト方法
採用活動は大きく分けて母集団形成から選考、内定、入社までいくつかのフェーズがあります。それぞれの段階で候補者が求める情報や企業に対して聞きたいことは変化していくため、各フェーズに応じたアトラクトの工夫が必要になります。
採用活動の中でアトラクトを意識すべき主な場面は、以下の通りです。
・インターンシップ、会社説明会
・求人票
・カジュアル面談
・面接
・採用クロージング
・内定者フォロー
SNSや自社サイトなどの広報活動
はじめに重要となるのは、候補者に自社を知ってもらうための広報フェーズです。このフェーズでは、SNSや自社サイトを活用して幅広い層に情報を届け、興味を持ってもらうことが目的になります。
SNSでは、社員の日常や社内イベント、会社のビジョンなどを定期的に発信し、双方向のコミュニケーションを図ります。自社サイトでは、社員インタビューや働く環境、社風を紹介するコンテンツを掲載し、自社の魅力を視覚的かつ具体的に伝えます。その際は、他社にはない独自の強みやカルチャーを積極的に発信して競合との差別化を意識するようにしましょう。
インターンシップ、会社説明会
主に新卒採用においては、応募前の接触フェーズで、学生と直接接点を持ち、自社への理解や親近感を深めてもらう場が多く設けられます。インターンシップでは、学生が実際に職場を体験し、社員と一緒に仕事をすることで、社風や仕事内容への理解を深められます。実際の職場体験を通じ「ここで成長できそう」「この会社の雰囲気が好き」と感じてもらえれば、強力なアトラクト効果が生まれます。
また、会社説明会も企業のミッションやビジョン、事業内容などを直接伝えられる重要な機会です。Web上では得られない生の情報を提供できる場であるため、説明する担当者の人選もポイントになります。若手社員や活躍中の社員が自身の言葉で仕事のやりがいや社内の雰囲気を語ることで、候補者にリアルな魅力が伝わりやすくなるでしょう。さらに、社員との座談会や懇親会などカジュアルな交流の場を設ければ、学生は社員の人柄に触れて「この人たちと働きたい」と感じるきっかけにもなります。こうした直接交流の場での魅力づけは、学生に強い印象を残し、応募意欲を高めるうえで非常に効果的です。
求人票
求人票も立派なアトラクトのツールです。候補者は求人票を通じてその会社や職種のイメージを膨らませます。ただ要件や条件を羅列するだけでなく、読む人の心に響く工夫が重要になります。例えば、仕事内容や働く魅力を具体的に描写し、どんな成長機会があるか、どのような人と働けるかなどを盛り込みます。成長できる環境といった抽象的な表現だけではなく、「入社1年目から○○のプロジェクトを任される」「○○スキルを習得できる研修制度あり」など具体例を交えることで、候補者は自分のキャリアを重ね合わせてイメージしやすくなります。
また、求人票の構成にも工夫を凝らし、冒頭で自社独自の魅力が伝わるキャッチコピーやリード文を置くことで、候補者の興味を引くことができます。こうした魅力的な求人票は、応募段階で候補者の心を掴み、次の選考へ進む意欲を高める大きな役割を果たします。
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カジュアル面談
カジュアル面談は、本選考に進む前の段階で実施されることが多く、この場での印象が「選考に進むかどうか」を大きく左右するフェーズです。選考のための“見極め”というより、候補者に自社への理解と親近感を持ってもらうためのアトラクト要素の強い場だと考えるとよいでしょう。
カジュアル面談では、リラックスした雰囲気の中で候補者のキャリア志向や疑問をじっくりヒアリングし、その関心に合わせて会社のビジョンや仕事内容、働く環境について率直に伝えます。例えば、候補者が成長機会を重視しているなら、実際に若手が活躍している事例を紹介したり、希望するキャリアパスを実現できる環境があることを説明します。
また、カジュアル面談の場では、まず候補者の疑問や不安を丁寧に解消し、安心して選考に進めるようなコミュニケーションを心がけることが大切です。そのうえで、選考に進むタイミングでオフィス見学や現場社員との顔合わせといった機会を用意できれば、職場の雰囲気や一緒に働くメンバー像を具体的にイメージしてもらうことができます。こうした体験はアトラクト効果を一段と高め、「この会社で働きたい」という気持ちの後押しにつながるでしょう。カジュアル面談を通じて築いた前向きな印象や信頼感は、その後の正式な選考にも良い影響を与えます。
面接
面接では、面接官は質問を通じて候補者を見極めますが、候補者もまた面接官や面接内容を通じて企業を評価しています。そのため、面接の場でもアトラクトを意識した対応が欠かせません。面接中の対話を通じて候補者が重視しているポイントを探り、自社の強みや魅力をアピールしましょう。
その際は、複数の面接官や面接段階を通じて一貫したメッセージを届けることも重要です。面接に関わる社員全員が、自社の採用方針や候補者に伝えたい魅力をきちんと理解している状態をつくりましょう。そのためには、事前に訴求ポイントを共有するだけでなく、面接官向けの勉強会などを通じて、候補者への向き合い方や伝え方をそろえておくことも有効です。こうした面接での魅力づけにより、候補者は選考を進める中で「この会社で働きたい」という気持ちをより強めていくでしょう。
採用クロージング
採用クロージングは、候補者に最終判断をしてもらう重要な場面です。内定通知後、候補者に対して待遇や入社条件の説明、すり合わせを行う機会ですが、同時に最後のアトラクトをかける場でもあります。候補者が抱えている疑問や不安を丁寧にヒアリングし、一つ一つ解消していきます。他社と迷っている様子であれば、改めて自社で得られる成長機会や働く魅力を伝え、「ここで働くイメージ」を具体的に持ってもらえるようにしましょう。
新卒採用の場合は内定者懇親会やオンライン交流会を開催し、社員や他の内定者と直接話せる場を設けることで、入社後のイメージを具体的に持ってもらいやすくなります。一方で中途採用の場合は、配属予定先の上司と、入社後に担ってほしい具体的な役割や期待値をすり合わせる場を設けると効果的です。また、条件面での調整が可能なのであれば、柔軟に対応することで誠実さが伝わるでしょう。
このように採用クロージングを通じて候補者の入社意欲を高めることで、内定承諾へとつなげる確率を高められます。
内定者フォロー
採用活動の締めくくりとして欠かせないのが、内定後から入社までのフォローです。内定後も入社まで期間が空く場合、内定者の気持ちが離れてしまったり、他社から引き抜きのアプローチを受けたりする可能性があります。そうした事態を防ぐために、継続的なフォローで入社意欲を維持、向上させることが重要です。具体的には、定期的に連絡を取って入社準備のサポートをしたり、社内イベントや懇親会に招待して入社前にチームの雰囲気に慣れてもらったりする方法があります。
また、入社前資料(会社の最新ニュースや部署の紹介資料など)を共有することで、内定者に歓迎されている安心感を与えられます。このようなフォローにより、内定者はモチベーションを高く保ち、初出社の日を迎えてもらうことができるでしょう。
アトラクト成功のために押さえるべきポイント
これまで、採用プロセスの各フェーズで実践できるアトラクトの方法を紹介してきました。
最後に、どの場面にも共通して意識したいアトラクト実践のポイントを紹介します。
⚫︎候補者の視点を理解する
常に候補者が「何を求めているか」「何に不安を感じているか」を意識しましょう。各フェーズで候補者の興味・関心は変化します。面談や面接を通じてこれらのニーズを把握し、タイムリーに応じた情報提供をすることがアトラクト成功のカギです。
⚫︎自社の魅力を洗い出し整理する
候補者に伝えるべき自社の強みや魅力を明確にしておきましょう。企業理念やビジョン、事業内容、働く環境、社風、待遇など、様々な切り口で自社のアピールポイントをリストアップします。現場の社員にもヒアリングし、客観的な魅力を洗い出すことで、より説得力のある訴求が可能になります。
⚫︎競合他社の動向を把握する
候補者は複数企業を比較検討しています。競合他社がどのような魅力を打ち出しているかをリサーチした上で、自社ならではの差別化ポイントを考えましょう。他社より劣る点を無理に隠す必要はありませんが、別の角度から自社の強みを伝えるなど、自社に入るメリットを際立たせる工夫が重要です。
⚫︎メッセージの一貫性と誠実さを保つ
採用プロセス全体を通じて、候補者に伝えるメッセージは一貫性を持たせましょう。採用チーム内で訴求ポイントを共有し、どの場面でもブレない魅力発信を心がけます。また、良い部分ばかりを伝えるのではなく、課題も正直に伝えることで、候補者が自社をより正しく理解し、結果としてミスマッチの防止につながります。
以上のようなポイントを踏まえてアトラクトに取り組むことで、候補者に響く効果的な採用活動を展開することができるでしょう。
採用アトラクトの成功を、専門パートナーとともに
採用の現場では、「魅力を伝えることの大切さは分かっていても、実際にどう表現すればいいのか分からない」「忙しくてそこまで手が回らない」といった声が少なくありません。アトラクトを成功させるには、採用の設計・発信・面接対応などを一貫して整える必要がありますが、それを社内だけで完結させるのは容易ではありません。
株式会社ねこのては、スカウト運用や応募者対応を含む採用代行や、広報施策をサポートする採用広報支援を通じて、企業の採用活動を幅広く支援しています。企業の採用活動をトータルで支援するプロフェッショナルです。貴社の強みを引き出し、候補者に「ここで働きたい」と感じてもらえるアトラクト設計をお手伝いします。
採用アトラクトの仕組みづくりを始めたい方は、まずはお気軽にご相談ください。
まとめ
選考を通じて自社の魅力をしっかり伝え、候補者に「入社したい」と感じてもらえるかどうかが、現代の採用成功の大きなカギを握っています。本記事で述べたように、アトラクトは採用プロセスの各フェーズで実践でき、例えばSNSでの情報発信から始まり、面接・オファー面談に至るまで一貫して候補者に響くコミュニケーションを行うことが大切です。候補者目線を意識しつつ、自社の強みを効果的に訴求することで、「選ばれる会社」への第一歩となります。
ぜひ自社の採用プロセスを振り返り、まだ十分にアトラクトできていないポイントがあれば改善を図ってみてください。丁寧な魅力づけを積み重ねることで、採用活動の成果は確実に高まっていくでしょう。
