内定辞退を防止!選考〜入社前の実践策まとめ

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採用担当者にとって、内定辞退は頭を悩ませる大きな課題です。苦労して選考した候補者から入社辞退の連絡を受けると、採用計画が狂うだけでなく、投じた時間やコストが無駄になってしまいます。
本記事では、内定辞退が起きる背景と主な理由をひも解き、企業が取り組むべき内定辞退防止策を具体的に解説します。優秀な人材を逃さず、採用を成功させるためのヒントとしてぜひ参考にしてください。
内定辞退率の現状と傾向
採用を取り巻く環境が大きく変化する中、企業が内定辞退に直面する機会は確実に増えています。自社が講じるべき対策を見極めるためにも、まずは内定辞退率の傾向を正しく把握していきましょう。
新卒採用の場合:複数内定による高い辞退率
新卒採用では学生の内定辞退が年々増加傾向にあり、現在では内定辞退率が6割を超えるのが当たり前になりつつあります。リクルート就職みらい研究所の調査によると、2025年卒(2025年3月卒業時点)の就職内定辞退率は63.8%に達しており、2020年代前半は60%前後の高止まり状態が続いています。
さらに、同調査では 学生一人あたりの内定取得企業数の平均が年々増加しており、2025年卒では2.64社です。売り手市場により、複数の内定を得て最終的に入社先を慎重に選ぶ学生が増えているのが実態です。
参考:リクルート(就職みらい研究所)就職プロセス調査(2025年卒)「2025年3月度(卒業時点)内定状況」
中途採用の場合:辞退率は低めだが油断禁物
中途採用の内定辞退率は、新卒に比べると低い水準です。マイナビの調査によれば、2024年時点で中途採用の内定辞退率は約9.3%と報告されており、新卒のような大量の辞退は起こりにくいのが実情です。これは、中途求職者は在職中の転職活動などで一度に応募する企業数が限られることや、選考のタイミングが各社バラバラで複数の内定が重複しにくいことも要因でしょう。しかし近年は通年採用の広がりなどにより、中途でも複数オファーを天秤にかけるケースが増えています。
つまり、中途採用でも「内定=入社」ではなく、他社との競合・選択肢の広がりや諸条件の比較があるため、辞退リスクを前提とした採用設計が求められます。
内定辞退が起きる原因とは?
内定辞退が発生する背景には、さまざまな要因が絡み合っています。ここでは、辞退を引き起こす代表的な理由を把握し、どのような点に改善余地があるのかを解説していきます!
志望度の高い他社からの内定獲得
多い理由の一つが、候補者がより志望度の高い他社から内定を得たケースです。新卒採用の場合、学生は複数社を併願し自分なりの志望順位をつけています。第一志望の企業から内定を得た場合、それまでキープしていた他社の内定を辞退するのは自然な流れと言えるでしょう。また、滑り止めのような位置付けで受けられていたケースでは、内定出しのタイミング次第で辞退されてしまうこともあり得ます。
中途採用でも同様で、候補者は複数の転職エージェントや求人サイトを並行利用し、他社選考を最後まで続ける傾向があります。内定後も別企業からスカウトがあれば、より条件が魅力的なオファーと比較検討した結果、当初の内定を辞退することもあります。
このような他社状況と志望度の変化は企業側ではコントロールしづらい部分ですが、「自社が第一志望ではないかもしれない」前提で早め早めのフォローが重要です。
企業イメージ・社風のギャップ
候補者が抱いていた企業イメージと、選考を通じて見えた実像にギャップが生じることも辞退の原因です。例えば、当初は「風通しが良さそうなベンチャーだ」と思っていたのに、実際の面接で受けた印象が「上下関係が厳しそう」「社風が合わないかも」と感じれば、入社意欲は一気に低下します。
また、SNSや口コミサイトでの企業評判が悪い場合、内定後にそれを目にして入社を思いとどまるケースもあるでしょう。企業説明会や面接で自社の魅力や実情をしっかり伝えきれなかったり、候補者の期待値コントロールを怠ったりすると、入社直前でのミスマッチが原因で辞退につながりやすくなります。
雇用条件や待遇のミスマッチ
勤務地や給与、福利厚生など条件面の不一致も、よく見られる理由の一つです。例えば「思っていたより給与が低かった」「求人票に残業時間の記載がなく不安になった」といったケースです。特に新卒採用では、応募段階では待遇の細部まで把握しておらず、内定後に詳しく条件を確認して希望とかけ離れていると判明する場合もあります。また転勤の有無や将来のキャリアパスなど、本人にとって重要な条件が後から判明し、そこで引っかかってしまうこともあるでしょう。
企業側にとっては提示している条件でも、候補者が十分に理解していない場合もあるため、提示内容への不満や懸念がないか候補者の本心を確認しておくことが重要です。また、「将来的に給与がどう上がる見込みか」「残業削減に向けた取り組みはあるか」といった点まで説明できれば、候補者も安心感を持ちやすくなるでしょう。
入社までの不安感と内定ブルー
内定から入社まで長い期間が空く場合、候補者が漠然とした不安(いわゆる「内定ブルー」)に陥ることがあります。最終面接を終えてほっと一息ついた後、「本当にこの会社でいいのだろうか」と急に不安になる現象です。時間の経過とともに「もっと自分に合う会社が他にあるのでは」と考え出し、結果として他社の選考を続けたり、別の内定を検討したりするケースもあります。
この不安心理は、企業からのフォローが乏しいほど強まりがちです。内定通知後に企業からのフォローが少なく、いわゆる「放置」されていると感じてしまうと、候補者の不安は大きくなり、他社を選択したり内定辞退を検討するきっかけにもなりかねません。
家族(親・パートナー)からの反対や影響
新卒採用において見逃せないのが、候補者の家族、特に親の影響です。少子化・核家族化の中、就職先の相談相手として親の存在感が増しています。実際、マイナビの調査では内定者の親に対して入社承諾の確認を行う「オヤカク」を経験した親が45.2%にも上ることが報告されています。親からの後押しが得られないと、本人が入社に前向きでも思い留まってしまうことがあるため、家族への説明やフォローも重要なポイントとなっています。
また中途採用においても、配偶者やパートナーの意向が転職の最終判断に影響を及ぼすケースがあります。転勤の有無や通勤時間、年収・勤務時間の変化、子どもの進学や家計管理といったライフプランへの影響から、配偶者からの反対により本人は前向きでも辞退に至ることもあります。実際に、企業によっては内定者の家族・配偶者も交えた懇親会や説明会を設け、自社の制度や働き方について理解を促す取り組みが見られます。
参考:マイナビ キャリアリサーチLab|2024年度 就職活動に対する保護者の意識調査
【選考〜内定通知】内定辞退を防ぐ具体策
ここまで整理したように、内定辞退はさまざまな理由から起こります。辞退を完全に防ぐことはできなくても、候補者の不安をなくす工夫や対応の質を高めることで大幅に抑えることができます。ここでは、選考中から内定通知の過程で実践できる効果的な内定辞退防止策を解説します!
面接官・採用担当者の印象を良くする
選考過程における企業担当者の印象は、内定承諾率に大きく影響します。候補者にとって面接官や採用担当者は「会社の顔」です。その対応が高圧的だったり不誠実に感じられれば、「この企業で本当に大丈夫だろうか」という疑念につながり内定辞退の一因となります。実際、「面接官の印象が悪かった」という理由で内定辞退する人もいます。
具体的な対策としては、面接官や採用担当者への事前トレーニングが挙げられます。面接での適切な受け答えやマナーについて共有し、横柄な態度や圧迫的な質問をしないよう徹底しましょう。
候補者への丁寧な情報提供と質問対応
選考中から候補者が抱く疑問や不安を拾い上げ、丁寧に情報提供していくことも辞退防止策の一つです。例えば「残業はどのくらいありますか」「配属は希望を考慮してもらえますか」といった質問が出れば、一つ一つ誠実に答えましょう。質問への回答を後日持ち越す場合も、できるだけ早くフォローアップし曖昧なまま放置しないことが大切です。
特に雇用条件は候補者が最も気になる項目のため、残業や休日、勤務地、将来のキャリアパスなど、後になって「聞いていない」「想定と違った」とならないよう透明性高く伝達します。情報開示と質問対応を徹底する企業姿勢は、候補者に安心感を与え、結果的に内定辞退の抑止につながるのです。
内定通知のスピードを上げる
候補者への内定連絡は、面接後できるだけ早く行いましょう。面接直後は候補者の入社意欲が最も高まっているタイミングなので、すぐに合格連絡をすることで他社に行ってしまうリスクを下げられます。自社で採用フローの迅速化が図れないか見直し、できる部分からでもスピードアップしていきましょう。例えば面接日程の調整を効率化したり、最終面接から内定までの社内決裁を簡略化するなどの工夫が考えられます。
【内定後】辞退防止につながるフォロー施策
内定通知後から入社日までのフォロー体制も、辞退防止に直結する重要なポイントです。以下に効果的な施策を紹介します!
定期的な連絡で入社までのエンゲージメント維持
新卒採用では内定から入社まで数ヶ月空くのは一般的ですし、中途採用でも候補者の状況によっては数ヶ月後の入社になる場合もあります。その場合、定期的な連絡を欠かさないことが重要です。前述でも解説した通り、放置されていると感じさせないことが肝心になるため、メールやチャットで「入社準備で不明点はありませんか?」と声を掛けたり、会社の最新ニュースや部署の様子を共有したりするのも効果的です。こうしたフォローアップにより入社意欲の維持・向上が期待できます。
内定者同士・社員との交流機会を設ける(新卒の場合)
新卒採用では内定者が会社や共に働く社員とのつながりを感じられる場を提供することも、有効な施策です。例えば、内定者懇親会や座談会を開催して、同期となる他の内定者や若手社員と交流できる機会を作ります。会社の雰囲気や実際の働き方を肌で感じてもらうことで、内定者の企業理解を深めモチベーションの維持が期待でき、辞退の抑止に大きく寄与します。
親へのアプローチ(オヤカク)の活用(新卒の場合)
前述でも解説した通り、新卒の場合、最終判断の場面で親や家族の意見が大きく影響することがあります。そのため、企業としては家族にも安心してもらえる材料を用意しておくことが重要です。会社概要や事業内容、福利厚生や働き方の特徴などをわかりやすくまとめた資料を用意したり、「保護者の方にもご覧いただける情報です」と案内したりするとよいでしょう。必要に応じて、保護者向けの説明ページやQ&Aコンテンツを用意するのも一つの方法です。自社のビジョンや働く環境について家族にも理解してもらうことで、内定者本人が相談した際に背中を押してもらいやすくなり、内定辞退のリスクを減らすことができるでしょう。
内定辞退を防ぎ、採用成功へ。まずはお気軽にご相談ください
内定辞退は仕方がないものと思われがちですが、実際には候補者の不安や情報の不足、コミュニケーションの行き違いが原因で起きてしまうケースもあります。適切な対策を講じれば、防げたはずの辞退を確実に減らすことができます。しかし、採用担当者の方々にとって、日々の業務と並行しながら選考プロセス全体の改善に取り組むのは大きな負担です。
株式会社ねこのては、採用活動の伴走支援や採用代行サービスを通じて、採用プロセスの最適化や内定者フォローの仕組みづくりをサポートしてきました。選考スピードの改善、面接官コミュニケーションの強化、内定後のフォロー体制構築など、貴社の状況に合わせた改善策をご提案します。
内定辞退に悩まれているのであれば、ぜひ一度お気軽にご相談ください。
まとめ
内定辞退を防ぐためには、現状把握ときめ細かな対策の積み重ねが不可欠です。本記事で述べたように、新卒採用では内定辞退率が60%を超える時代となり、多くの候補者が複数社の内定を天秤にかけています。だからこそ、採用担当者は候補者とのコミュニケーションやフォローを徹底し、「この会社で働きたい」という気持ちをいかに高められるかが勝負です。辞退防止策のポイントは、候補者との信頼関係構築と不安の解消にあります。選考スピードや丁寧な対応、内定後のこまめなフォロー、さらには親への配慮までさまざまなアプローチが効果を発揮します。採用担当者の皆様もぜひ、自社の状況に合わせた対策を講じ、大切な内定者とのご縁を確実に実らせてください。
