エンジニアをはじめとするIT人材の確保は、企業の成長を左右する重要なテーマです。しかし、経済産業省が公表した『IT人材育成の状況等について』によると、2030年には最大で約80万人ものIT人材が不足する可能性があるとされています。このように獲得競争が激化する中では、求人を出して応募を待つだけでは優秀な人材を確保するのは難しくなっています。

そこで注目されているのが「スカウト型採用」です。当コラムでもスカウトについては複数記事にわたって紹介してきましたが、特にエンジニア採用では転職活動をしていない「潜在層」へのアプローチが不可欠であり、「攻め」の採用手法としてスカウト型採用が主流になりつつあります。本記事では、エンジニア採用においてスカウトが重要とされる背景から、返信率を高める具体策を紹介します!

スカウト型採用の概要や候補者選定については、以下の記事でも詳しく紹介しているのであわせてご覧ください。

▶︎今さら聞けないスカウト型採用とは?メリット・デメリットや人事担当者が押さえておくべき基本知識を徹底解説!

▶︎スカウトメール返信率が劇的に上がる!候補者選定実践法

参考:経済産業省| 商務情報政策局 情報処理振興

エンジニア採用でスカウトが重要な理由とは?

ここでは、エンジニアのニーズの高まりを踏まえながら、エンジニア採用においてスカウトが重要である理由を解説します。

エンジニアの需要増により人材獲得が激化している

昨今、IT・エンジニア人材を巡る競争は非常に激化しています。厚生労働省の2025年10月の調査によると、「情報処理・通信技術者」のデータでは、有効求人倍率が1.55倍、新規求人倍率が3.43倍と高水準です。これは、全職種平均の有効求人倍率1.19倍、新規求人倍率2.16倍を上回る数字となっています。

これだけ需要が高い状況では、企業が求人を出して応募を待つだけでは、必要なスキルを持つ人材と出会うことが難しくなっています。特に優秀なエンジニアほど複数企業から声がかかるため、スピーディかつ魅力的にアプローチできるかが重要なテーマになっています。

参考:厚生労働省|一般職業紹介状況(令和7年3月分及び令和6年度分)について

転職潜在層との接点を広げられる

エンジニア採用においてスカウトが重要な理由は、転職潜在層にもアプローチできる点です。求人広告や転職エージェントでは「すでに転職を検討している層」にしか届かないため、エンジニアのように人材不足が顕著な領域では十分な母集団を確保しづらいのが現状です。

一方で、エンジニアの中には現職で技術を磨きながらも、「より良い条件や環境」「キャリアの広がり」に関心を持っている人も少なくありません。しかし転職を急いでいないため求人情報を積極的に探していない人々でもあります。スカウト型採用であれば、こうした転職市場にまだ出ていない層とも直接接点をつくることが可能です。

エンジニアのスカウトメール返信率を高めるコツ

エンジニアへのスカウトは、同じ条件・同じポジションであっても、伝え方やアプローチの違いによって返信率が大きく変わります。エンジニアは日々多くのスカウトを受け取っているため、ほんの少しの工夫や視点の違いが、開封されるか、返信につながるかを左右します。
ここからは、スカウトメールの伝え方や情報の出し方など、より多くの候補者に返信してもらうための具体的なポイントを紹介します!

開封したくなる件名にする

スカウトメールの成果を左右するポイントは、まず「件名」です。とくに優秀なエンジニアほど、日々多くのスカウトメールを受け取っているため、ありきたりな件名は埋もれてしまいます。まずは一覧画面で「このメールは自分宛だ」と思ってもらえるかどうかが勝負どころです。

開封率を高める件名には、共通する要素があります。
・「限定」「ご経験にマッチ」などで特別感を出す
・「バックエンド」「フロントエンド」「フルリモート」などで職種や条件のイメージを伝える
・氏名や経験内容を入れて一斉送信ではないことを示す

例えば、次のようなイメージです。

「【限定のご案内】〇〇様のバックエンド経験を拝見し、ご連絡しました」
「〇〇様のReact経験を活かせるリードエンジニア職のご相談です」
「フルリモート×サーバーサイド開発/◯◯様のご経験に近いポジションのご紹介」


一方で、避けたい件名のパターンもあります。例えば、「当社で一緒に働きませんか?」のように誰にでも送れる汎用的な文言や、条件をだらだらと並べただけの長文の件名などです。

こうした件名は一斉送信の印象が強かったり、一覧画面で途中で切れてしまったりして、候補者の目に留まりにくくなります。件名は短くシンプルにまとめ、最初の20〜30文字で「誰に」「どんな魅力があるのか」が伝わるよう工夫することが大切です。

レイヤーの高い人物を送信者にする

エンジニア向けのスカウトメールでは、「誰の名前で届くか」も返信率に影響します。社長や役員、CTO、開発部長など、組織の中でレイヤーの高い人の名義で送ることで、「自分に対して本気で声をかけてくれている」という印象を与えやすくなります。特にエンジニアは、経営層や技術責任者がどれだけ採用や技術にコミットしているかを重視する傾向があるため、その名前が前面に出ること自体が一つのメッセージになります。

ただし、名義だけを借りるのはNGです。メールではCEOやCTOの名前を出しておきながら、実際の面談には一度も登場しないとなると、かえって不信感を招きます。高いレイヤーの名義で送るのであれば、選考のどこかのタイミングで必ずその本人が登場し、きちんと話をする前提で運用しましょう。

一方で、高いレイヤーの名義で送るのが難しい場合は、人事名義で送る代わりに「一次面談では開発マネージャーが対応します」「カジュアル面談には現場リードエンジニアが同席します」といった形で、現場エンジニアが関わることを明記するとよいでしょう。件名に【CTOがカジュアル面談します】【開発部長との1on1面談をご案内】などと入れるのも、候補者をしっかり迎えたいという熱意が伝わりやすく、返信につながりやすくなります。

エンジニア視点で必要な情報を提示する

返信率を高めるには、「自社が伝えたいこと」よりも「エンジニアが知りたいこと」をどれだけ具体的に書けるかも鍵になります。例えば、どんな案件に関われるのか/どんな技術環境なのか/その先にどんなキャリアが描けるのかなどがエンジニアが知りたいこととして挙げられます。

◾️実際に担当しうる案件・プロジェクトを具体的に示す
まず効果的なのは、候補者が実際に携わる可能性の高いプロジェクトや案件をできるだけ具体的に示すことです。「自社プロダクトの機能改善」といった抽象的な説明ではなく、どんなサービスやプロダクトの、どの部分を、どの技術スタックで、どのような体制で進めているのかまで触れることで、候補者は仕事内容を“自分ごと”としてイメージしやすくなります。

さらに、「なぜその言語やフレームワークを選んでいるのか」といった背景を添えると、技術選定へのこだわりや開発カルチャーがより鮮明に伝わり、技術志向の強いエンジニアほど興味を持ちやすくなるでしょう。

 

◾️社内エンジニアの知見を借りて“エンジニア視点”を補強する
とはいえ、人事だけで技術的な魅力を文章に落とし込むのは簡単ではありません。開発環境や技術的なポイント、採用したいポジションの面白さは、やはり現場のエンジニアが一番よく把握しています。
例えば、具体的な案件例や技術的に工夫しているポイント、開発プロセスやチーム体制、さらには入社後すぐに担ってほしい役割などは、事前に社内エンジニアへヒアリングし、その内容をスカウト文に反映させるだけでも文章の説得力は大きく高まります。

余力があれば、スカウト文の一部をエンジニアに書いてもらうことも有効です。現場エンジニアの一言が加わるだけで、スカウト文の温度感やリアリティが高まり候補者にとって生きた情報として伝わりやすくなります。

 

◾️将来のキャリアや役割がイメージできる一文を添える
多くのエンジニアは、目先の条件だけでなくどんなキャリアを描けるかを重視しています。そのため、過去の経歴と入社後の期待をつなげる一文を入れるとスカウトの印象がぐっと良くなります。

(例)
「〇〇様にはこれまでのWebサービス開発のご経験を活かし、弊社の新規事業の立ち上げフェーズで、テックリードとして企画〜実装・チームビルディングまで幅広く関わっていただきたいと考えています。」

このように、「どんな経験をどう活かしてほしいのか」「どのレイヤーの役割を期待しているのか」まで書くことで、単なる求人案内ではなく「あなたに来てほしい」というメッセージとして伝わり、返信につながりやすくなります。

エンジニア採用のお悩みは、ねこのてが伴走して解決します

エンジニア採用は、求人倍率の高騰や母集団形成の難しさにより、以前にも増して採用のハードルが上がっています。この記事で紹介したノウハウは効果的ではあるものの、実務では限られたリソースの中で、これらを継続的に運用し続けることが大きな負担になる企業も少なくありません。

「スカウトの精度を上げたいが、時間が足りない」「ターゲット設定や文面作成をプロに任せたい」――そのような課題を抱えている場合は、ぜひねこのてにご相談ください。

私たちは、中小企業からスタートアップまで幅広い企業の採用課題に寄り添い、スカウト運用の最適化やエンジニア採用の戦略設計、採用プロセスの改善、採用広報の支援など、状況に合わせて柔軟に伴走することを得意としています。

とくにスカウト領域では、返信率の改善や工数削減、採用成功率の向上に向けた実務サポートを強みとしており企業様から高く評価されています。まずは現在抱えている課題や状況を丁寧に伺い、貴社に最適な方法をご提案します。

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まとめ

エンジニアの需要が高まる中、企業にはより戦略的な採用活動が求められています。求人だけでは母集団を確保しにくい状況では、転職潜在層にもアプローチできるスカウト型採用が重要な手法となります。スカウトの成果を高めるためには、採用要件やペルソナの明確化、候補者が知りたい情報を的確に伝える工夫が欠かせません。

スカウトは単なる連絡手段ではなく、候補者との接点を前向きに築くためのコミュニケーション施策として、継続的に改善していくことが大切です。